ル・パン
極小区画から生まれる幻のボルドー
醸造コンサルタント ミシェル・ロランの名前を、
リリースと同時に世界に知らしめたワイナリー
シャトー・ル・パンの紹介
シャトー・ル・パンはボルドーにあるドルドーニュ川の右岸、ポムロールの丘の中心部に位置しています。
シャトーとしての歴史は周りの老舗ワイナリーと比べとても浅く、1979年がファースト・ヴィンテージです。当時のワインの価格は同じティアンポン家が所有する隣の「ヴュー・シャトー・セルタン」よりも安価なもので、今の高騰がいかにとてつもないことなのか知ることができます。
そんなル・パンはファースト・ヴィンテージとなる1982年のワインが専門誌ワインアドヴォケイトで100点満点を獲得し、一気にスターダムを駆け上がり、ぺトリュスを凌ぐ人気と価格にまでなりました。このル・パンの一件が、その後のワイン界で生まれるシンデレラ・ワインのストーリーの先駆けとなったと言われています。
今日では世界中の名立たるワイン評論家が手離しで高評価を与えるボルドー右岸の至宝、ル・パン。あのシャトー・ペトリュスと肩を並べる、ポムロールを象徴するワイナリーとなりました。
ル・パンが生み出すワインはたったの7,000本。極狭の2.7haからボルドー最高峰の希少なワインのひとつが生まれます。
1万本にも満たない至高のワインが世界中のル・パン好き、ワイン好きに渡るため、その希少性はとてつもなく高く、今やコンディションのよいオールドヴィンテージを入手するのは一般的な販路では不可能と言われるほどです。
シャトー・ル・パンの歴史
1979年、ヴュー・シャトー・セルタンを所有するベルギーの酒商ティアンポン家が、隣接する小さな畑を購入したことから始まりました。シャトー名は、敷地の内に植えられていた一本松(フランス語で「ル・パン」)に由来してつけられたと言われています。当時、世界的に活躍する天才醸造家ミシェル・ロラン氏がコンサルタントとして携わったことで有名です。
初ヴィンテージは1982年ながら、1990年台には早々にボルドーの錚々たるシャトーの仲間入りを果たし、瞬く間に安定した高評価を得た驚異的なスピードは「ポムロルの奇跡」と語り継がれています。
ティアンポン家は、「偉大な豊かさと威厳に富んだワイン」を目指してル・パンを造っています。目を見張るほどに豊かながら、樽香が目立つ強くて壮大なスタイルではないポムロールを造り出し、世界中の愛好家にとって垂涎の味わいとなっています。
シャトー・ル・パンの特徴
ティアンポン家に買い取られた1979年当初のル・パンは名実ともにとても貧弱で、とても後にシンデレラ・ワインとなる想像はできないような状態でした。ここに変革を起こすためには大きな投資が必要でしたが資金投入の余裕があるわけでもありませんでした。
そんな中資金の節約のためにティアンポン家が所有する、ヴュー・シャトー・セルタンからのおさがりの中古の樽でル・パンを熟成させ、さらには二次発酵すらもこれを利用したのです。
結果として、この苦肉の策がより、自然発生的なマロラクティック発酵を行うことへのプロセスの一助となったのです。
この偶然により、シャトー・ル・パンはボルドー右岸で最初にマロラクティック発酵を行った生産者になったのです。後に、ル・パンの成長にならうべく多くのワイン・メーカーがこぞってこの手法を取り入れたのです。
当初の当主ジャック・ティアンポンが1979年に購入した畑は1.6haでしたが、段階的に近接する小さな土地を購入していき、ル・パンの区画は2haとなり後にシンデレラ・ワインとなり瞬く間に世界の注目の的となりました。
近年のル・パンのぶどうの平均樹齢は38年、メルロー100%で造られています。ぶどうの樹は1ha辺り6,000本と高い密植で栽培され、平均収穫量は30~35hlと低い収穫量制限を課していて、パワフルな果汁の肉厚さが伺えます。
収穫は全て手摘み、ステンレスタンクで発酵。熟成は新樽で行います(新樽比率100%)。約18か月の熟成の後、無濾過でボトリングされます。
生産量は年間たった7,000本と極少量で、価格高騰の大きな原因となっています。
また、このような希少性と高価な価格から偽造ワインも多く、特別な、信頼できるルートがないと、本物で品質の高いル・パンを入手することは不可能だといわれています。
現在、ル・パンはこのような偽造を防止するため、スイス製の紙にエチケットを印刷し、UVライトを当てると、特殊な模様が表示されるようにされ毎年変更が加えられるなど徹底した管理がされています。